大動脈弁狭窄症とは

大動脈弁狭窄症とは

心臓の内部は右心房、右心室、左心室、左心房の4つの部屋に分かれています。各部屋には三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁と呼ばれる心臓弁があります。この弁に障害が起き、本来の役割を果たせなくなった状態を「心臓弁膜症」といいます。
心臓弁膜症の代表的な疾患である「大動脈弁狭窄症」は、左心室と大動脈の間にある「大動脈弁」が何らかの原因で硬くなると、弁の開きが悪くなり、心臓から十分な血液を送り出すことができなくなるため、心臓に負担がかかる疾患です。

心臓と4つの弁

潜在患者数と治療の現状

大動脈弁狭窄症は、特に、高齢化の進む先進国において広がりを見せています。

大動脈弁狭窄症の潜在患者数は60~74歳で2.8%、75歳以上で13.1%と報告されており1、本邦における60歳以上の患者は約284万人、そのうち手術を要する重症の患者は約56万人と推計されています。

  • 1:De Sciscio P, Brubert J, De Sciscio M, et al. Quantifying the Shift Toward Transcatheter Aortic Valve Replacement in Low-Risk Patients: A Meta-Analysis. Circ Cardiovasc Qual Outcomes 2017; 10: e003287.
大動脈弁狭窄症の潜在患者数 (無症候性+症候性)

手術治療が必要な大動脈弁狭窄症の患者さんの多くが治療を受けられていない可能性があります。

手術を要する重症の患者さんは約56万人と推計されていますが、年間手術数は、2018年単年でおよそ2万件程度2と、手術治療が必要な多くの大動脈弁狭窄症患者さんが未治療の可能性があるといえます。
世界に先駆けて急速に高齢化が進む本邦においても大動脈弁狭窄症患者さんは増加しており、大動脈弁狭窄症の治療は重要な課題となっています。
近年、治療の選択肢が増えてきているため、高齢だからと諦めずに、医師に相談することが大切です。

本邦におけるASの年間手術数の推移

  • 2:Committee for Scientific Aairs, The Japanese Association for Thoracic Surgery, Shimizu H, Okada M, Tangoku A, et al. Thoracic and cardiovascular surgery in Japan during 2018 : Annual report by The Japanese Association for Thoracic Surgery. Gen Thorac Cardiovasc Surg 2021; 69: 179-212.
  • 3:Committee for Scientific Aairs, The Japanese Association for Thoracic Surgery, Shimizu H, Okada M, Tangoku A, et al. Thoracic and cardiovascular surgery in Japan during 2017 : Annual report by The Japanese Association for Thoracic Surgery. Gen Thorac Cardiovasc Surg 2020; 68: 414-449.
  • 4:Committee for Scientific Affairs, The Japanese Association for Thoracic Surgery, Shimizu H, Endo S, Natsugoe, S et al. Thoracic and Cardiovascular Surgery in Japan in 2016 : Annual Report by The Japanese Association for Thoracic Surgery. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2019; 67: 377-411.
  • 5:Committee for Scientific Affairs, The Japanese Association for Thoracic Surgery, Masuda M, Endo S, Natsugoe S, et al. Thoracic and cardiovascular surgery in Japan during 2015 : Annual report by The Japanese Association for Thoracic Surgery. Gen Thorac Cardiovasc Surg 2018; 66: 581-615.
  • 6:Committee for Scientific Affairs, The Japanese Association for Thoracic Surgery, Masuda M, Okumura M, Doki Y, et al. Thoracic and Cardiovascular Surgery in Japan During 2014 : Annual Report by The Japanese Association for Thoracic Surgery. Gen Thorac Cardiovasc Surg 2016; 64:665-97.
  • 7:Committee for Scientific Affairs, The Japanese Association for Thoracic Surgery, Masuda M, Kuwano H, Okumura M, et al. Thoracic and Cardiovascular Surgery in Japan During 2013 : Annual Report by The Japanese Association for Thoracic Surgery. Gen Thorac Cardiovasc Surg 2015; 63: 670-701.
  • 8:Committee for Scientific Affairs, The Japanese Association for Thoracic Surgery, Masuda M, Kuwano H, Okumura M, et al. Thoracic and Cardiovascular Surgery in Japan During 2012 : Annual Report by The Japanese Association for Thoracic Surgery. Gen Thorac Cardiovasc Surg 2014; 62: 734-64.

大動脈弁狭窄症の症状

大動脈弁狭窄症は症状を自覚しないままで、病気が進行している可能性があります。

大動脈弁狭窄症は軽症のうちはほとんど自覚症状がありませんが、病状が進むと、息切れ、ドキドキ、胸の痛み、気を失うなどの症状がみられるようになります。

大動脈弁狭窄症の典型的な症状

大動脈弁狭窄症は、重症になって初めて自覚したり、心不全と診断され入院後に判明する場合や、検診時の聴診で心雑音を指摘されて見つかることもあります。しかしながら、高齢の患者さんは日常生活での活動を無意識に制限する傾向があるため、重症であっても症状を自覚していないこともあります。

大動脈弁狭窄症は、はじめは弁という一部分の病気ですが、進行すると心筋(心臓を動かす筋肉)という心臓全体の病気になります。そのような状態になると、いくら一部分である弁を取り換えても心筋の障害は回復せず、心臓は元通り働くことができなくなります。大動脈弁狭窄症は自然に治ることはないので、心筋の障害が進行する前に適切なタイミングでの診断と治療をすることが非常に大切です。

大動脈弁狭窄症の典型的な症状

  • 9:Lester SJ, Heilbron B, Gin K, et al.The natural history and rate of progression of aortic stenosis.Chest.1998;113:1109-14.
  • 10:Otto CM.Timing of aortic valve surgery.Heart.2000;84:211-8.

診断後の定期検査

大動脈弁狭窄症と診断されたら、定期検査で重症度の変化を把握することが大切です。

大動脈弁狭窄症は、症状が体に現れるまでの年数には個人差があります。しかし、「症状はない」と思っていても、実は症状があり、病気が進行している場合があります。大動脈弁狭窄症と診断されたら、心エコー図検査(超音波検査)などを用いて、定期的に重症度の変化を把握することが大切です。

主な定期検査項目

主な定期検査項目

心エコー図検査による定期検査の頻度

  • ※検査頻度は個々の患者さんの状態によって異なるため、主治医と相談してください。
  • ※検査項目は個々の患者さんの状態または施設によって異なります。
  • ※他には、治療方針を決める際に、CT検査、心臓カテーテル検査などが行われる場合もあります。

心エコー図検査による定期検査の頻度

  • 11:日本循環器学会/ 日本胸部外科学会/ 日本血管外科学会/ 日本心臓血管外科学会合同ガイドライン.2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン.
    http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2020_Izumi_Eishi.pdf(2020年4月1日閲覧)

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