治療後は、娘夫婦や近所の人に助けられ、       元のように元気に暮らしています。

76歳まで現役の看護師として働いていた長谷川静子さん。85歳頃から、体を動かすときにしんどさを感じるようになりました。年のせいだと思っていましたが、90歳のときに大動脈弁狭窄症と診断され、倉敷中央病院でTAVI(経カテーテル大動脈弁治療)を受けました。TAVIを受けるかどうか、眠れないほど悩んだという長谷川さんですが、今はすっかり元気になり、畑仕事も楽しんでいます。その貴重なお話を、先生方を交えて伺いました。(インタビュー実施:2015年7月)

TAVIを受けるまでは、息苦しいし、不安だし。
何度も病院に行っては、心を落ち着けていました。

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体が思うように動かせないのは、「年だから」と思っていた

大動脈弁狭窄症と診断される前は、どのような暮らしをされていましたか?

長谷川静子さん 高梁市の高梁中央病院で19年、看護師として働いておったんです。それから「もう年やから」と、そこの精神科に移って12年働いて、成羽町のこまい(小さな) 医院のデイケアでも働きよったんです。

先生 えっ、長谷川さん、看護師さんだったんですか?

長谷川静子さん 大正12年生まれですから、大昔のです(笑)。

先生 初めてお聞きしました。それは知りませんでした(笑)。

長谷川静子さん それで、その成羽町の医院に勤めとったときに、夜中に目が覚めてから寝られなくなって。あまり、しんどいということはなかったんですけど、「これはもう、仕事を辞めにゃいけん」と思うて、辞めました。それが76歳です。その後、ずっと、その医院で薬をもらっとったんです。

さん ほかに病気を持っているのでね。ただ、そのときはまだ元気でした。

その後、体調の変化にお気づきになられたのはいつ頃ですか?

さん 85、86歳くらいから、えらい(苦しい、しんどい) というようになって。でも、歩いたりするのがえらいぐらいで、言うことも、はっきりしてますしね。本人も、「年だから」と言っていたんです。

長谷川静子さん 年がいったら枝が枯れるように、次々えらくなるんじゃなと思うて、半ば諦めとったんです。

先生 ご高齢の方は、症状がわかりにくい方もおられるんです。また、長谷川さんのように、実際に症状があるけれども、ご自分の年のせいだと思われている方もたくさんおられます。

それから、どのような経緯で倉敷中央病院を受診されたのですか?

さん 手術する1年半ぐらい前だから、88歳くらいでしたか。本当にえらい感じがしたんです。ちょっと歩いたら座る、の繰り返しで。畑に行っても、何メートルか歩いたら休むという感じだったんです。

長谷川静子さん えらくなったりしても、寝て過ごすようなことはなかったんです。「大儀なけ(だるいから)、仕事を今日もせなんだ」と、日誌に書くことはありましたけど。

さん おばあさん、自分が看護師をしていたという経験があるから、余計なことを言ったら、「もうわかっとるね」と言われるのがオチですからね。自分で生活はできていましたし。いよいよとなったら、病院に行くだろうと思っていました。

長谷川静子さん 勤めていた医院で、「しんどいんです」と言って、胸のレントゲンを撮ってもらったら、ちょっと心臓が大きくなっておったんです。「これはどこぞで診てもらわないけまあ」と言われて、1カ月分の薬をくださったんですが、ほかの病院を紹介するとは言われなかったんです。そこで私は高梁中央病院の総師長が昔からの知り合いだったもんですから、先生を紹介してもらいました。内科で診てもろうたら、「これは循環器のほうがよかろう」と言われて、循環器科に行ったら「こりゃあ、重症じゃ」と言われた。それが2013年の9月9日じゃったんです。それから、循環器科の先生が倉敷中央病院の福先生に連絡してくださって、13日に受診しました。

先生 私、そのときの高梁中央病院の循環器の先生とは知り合いでして。「90歳の方で、大動脈弁狭窄症なんだけど、どうですか。( TAVI を) できますか」と聞かれたので、「お元気な方だったら、大丈夫です」という話をして、すぐご紹介していただきました。

TAVIを受けるかどうか寝ずに悩んだ

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先生方が長谷川さんにTAVIを勧められたのはなぜですか?

先生 最初に診察させていただいた時、90歳には見えないくらいお元気な方でしたが、年齢を考慮して、基本的にはTAVIという方向で考えていました。ただし、TAVIを行うには、事前に1週間ほど入院してもらい、全身の検査をくまなく行う必要があります。そして、そのデータを基に、ハートチーム(*1)で検討を重ねて正式に決定します。そこで長谷川さんには、「まず4~5日ほど入院して検査をしましょう」と、入院予約を取らせていただきました。

後藤先生 TAVIは、今ある医療機器できちんと治療できるかどうか、いくつか条件があります。ハートチームで検討した患者さんの3人に1人は、血管の太さや形などが合わずにTAVIをお断りせざるを得ないのが現状です。ただ、大動脈弁狭窄症に対する日本の外科手術(大動脈弁置換術;AVR)(*2)の成績はすごく良いので、長谷川さんのように90歳でも非常にお元気な方であれば、TAVI ができない条件であった場合は、手術をお勧めしていたと思います。

先生 検査入院に際して、私も、長谷川さんには「TAVIの条件に合わなければ、もしかして手術というのもあるかもしれない」とお話をさせていただきました。

後藤先生 手術とTAVIの一番の違いは、大きな傷がつくか、つかないかです。そのため、治療後に歩けるようになるまでの時間や元の生活に戻るまでの時間はTAVIのほうが大分短いんですよね。長谷川さんの場合は、TAVIを行うための条件を考えても、太ももの付け根からのアプローチ(*3)で問題ないだろうという結論になりました。

ご本人やご家族は、TAVI を勧められた時はどのようなお気持ちになられましたか?

さん 「本人も元気だから、十分対応できるんじゃないか」という先生のお話があったので、それならその方向でいきましょう、と。

長谷川静子さん もうこのまま(TAVI を受けずに)いったほうがええんじゃろうか。それとも(TAVIを受けたら)長生きができるやろうか、それもしてみにゃわからんしと思うて、大分悩みました。寝ずに悩みました。

さん 朝になったら足がむくんでいるから、それもすごい気にしていました。検査入院の後も、ちょっと何かあったら「病院に行こう、行こう」と言って。3日に1回ぐらいは病院に来ていましたからね。病院に来て先生の顔を見たら安心するって言って、それでちょっと心が落ち着いたという感じですね。

 

*1 TAVIは、カテーテル治療専門医(主に循環器内科医)、心臓血管外科医、麻酔科医、心エコー医および看護師、理学療法士、放射線技師、臨床工学技士などのコメディカルが各専門分野のノウハウを結集し、一人ひとりの患者さんにとって最適な治療法を検討、選択することによってはじめて可能となる。この専門家集団を「ハートチーム」と呼ぶ。

*2 開胸し、大動脈を切開して機能が低下した大動脈弁を取り除き、人工弁を縫い付ける方法。人工心肺装置を用いて、心臓を停止させた状態で行う外科手術。AVR(AorticValve Replacement)。

*3 TAVI(経カテーテル大動脈弁治療)の2つの手法のうち、生体弁を装着したカテーテルを太ももの付け根の血管から挿入する方法。TF(経大腿アプローチ)。

ここに掲載された情報は、あくまで一般的な解釈に基づき疾病・治療法情報を提供する目的で作成されたものであり、 特定の手技等を推進するものではありません。個々の患者さんの診断および治療方法については、必ず医師とご相談ください。

登場者プロフィール

  • 患者さん

    長谷川 静子さん
    (92歳)

  • 娘さん

    長谷川 悦子さん

  • 監修

    後藤 剛先生
    倉敷中央病院
    循環器内科 部長

    1979年 岡山大学卒業
    倉敷中央病院内科 研修医
    1981年 倉敷中央病院内科 医員
    1985年 倉敷中央病院 循環器内科 副医長
    1995年 倉敷中央病院 循環器内科 部長
    2009年 倉敷中央病院 臨床研究センター
    主任部長(兼任)
    (2014年4月より
    倉敷中央病院 臨床研究推進部に名称変更)
    現在に至る

  • 監修

    福 康志先生
    倉敷中央病院
    循環器内科 部長

    1995年 千葉大学卒業
    京都大学医学部 老年科
    1996年 倉敷中央病院 内科
    1997年 倉敷中央病院 循環器内科
    2011年 倉敷中央病院 循環器内科 部長
    現在に至る

  • 監修

    三竿 あゆみ先生
    倉敷中央病院
    循環器内科 医員

    2011年 香川大学卒業
    倉敷中央病院 初期研修医
    2013年 倉敷中央病院 循環器内科
    現在に至る

その他のストーリー

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