治療に踏み出した二人の患者さん、            元気を取り戻し、以前と変わらぬ生活を送っています。

年齢を理由に治療を諦めるようなことはありませんでした。

TAVIとの出会い

舟越さんは、TAVI 治療が開始される前の2010年に大動脈弁狭窄症と診断されたわけですが、当時検討された治療法は何でしたか?

舟越鐵也さん 地元の病院では、大動脈弁を治療するには「外科的治療である大動脈弁置換術*1しかない」と言われ、九州大学病院を紹介されましたが、なかなか踏ん切りがつかず、3カ月ほど迷いました。それで、実際に手術を行う九州大学病院に行ったところ、やはり「外科的治療が適切」ということだったので、2010年8月12日に手術をする予定でした。でも、前日の8月11日に心筋梗塞を起こしましてね。地元の病院で経皮的冠動脈形成術*2を受けたんです。その後は経過観察となりました。

TAVI治療を受けることになられたのは、体調の変化があったからですか?

舟越鐵也さん 心筋梗塞の後、生活がすっかり変わって、本当にゆっくりとしか動かないようになって畑仕事もやめました。自分でも、だんだん悪くなってきているのは感じていましたが、2015年2月に、ひどい貧血みたいな感じで、ふらふらして歩けなくなったんです。地元の病院で検査したら、大動脈弁狭窄症が原因じゃないかということでした。年齢的に外科的治療はもうできないという状況だったんですが、TAVIというカテーテルによる大動脈弁の新しい治療法があると教えられたんです。合併症の恐れもあると聞いたので悩みましたが、TAVI を行う九州大学病院の先生方のご意見を聞きたいと思い、3月10日にこちらで検査してもらいました。園田先生から「TAVIは可能です」と聞き、お願いすることにしました。

松本さんは救急搬送されていますが、その時、どのようなお話があったのでしょうか。

松本さんの息子さん 救急搬送された病院で大動脈弁狭窄症と診断されまして、精密検査をするために九州大学病院を紹介されたんです。TAVIを受ければ治る可能性があると言われました。

検査をされて、TAVIが決定したのはいつ頃だったのですか?

松本さんの息子さん 2014年1月後半に九州大学病院に来て、精密検査をして、TAVIができることになったんですけど、TAVI の実施は4月になりました。その待っている間が不安でしたね。

松本千年さん 早く受けたい気持ちはあったんですけどね、病院の都合もありますから。

園田先生 すみません。松本さんが待機可能な状態であると判断したため、その間に私たちもハートチーム*3で相談しながら、十分に検討を重ね、準備をしていたのです。

お二人とも、TAVI による治療を目的として九州大学病院を紹介されたわけですが、改めて、先生方がTAVIを決定された理由を教えてください。

園田先生 やはり、一番は年齢と体力の問題です。舟越さんの場合は、2010年に当院で外科的治療を受けられる予定でしたが、入院の前日に心筋梗塞を起こされました。私もそのとき連絡を受けたことを覚えています。今回検査しましたら、心機能が通常の3分の1くらいまで低下していました。体力的にも外科的治療は負担が大きいですし、人工心肺を用いる場合、頭部への血流が低下する懸念があります。舟越さんは頭部への4本の血管のうち、3本がほぼ詰まっている状況でしたので、脳のトラブルが起こることが一番心配されました。だから、これは短時間で治療できるTAVIのほうがいいと判断しました。また、松本さんの場合は心不全の程度がとても強かったんです。それまでお元気であったとはいえ、大動脈弁狭窄症が急速に進行していて、体力が落ちている状況では外科的治療はできないので、TAVIの実施を決めました。TAVI の方法としては、お二人とも胸からのアプローチ*4でした。太ももの付け根からのアプローチ*5のほうが負担は少ないのですが、お二人とも太ももの血管の太さが十分ではなかったため、胸からのほうが安全に実施できると判断しました。舟越さんは2015年8月12日、松本さんは2014年4月9日にTAVIを実施しました。

      10-09  10-10  10-11

 

それぞれの思い


TAVIを受けるにあたって、不安はありませんでしたか?

舟越鐵也さん 私の場合、もうほかに方法がなかったので、園田先生から「TAVI は可能です」と聞いて、すぐに受けようと決めました。

舟越さんの息子さん 父は、不整脈があって、狭心症や心筋梗塞の発作も起こしていましたし、心臓の状態が相当悪かったので、TAVIに耐えられるかどうかが気になりました。その上、頭部への血管の状態も悪かったので、リスクも相当大きいでしょうから、家族としては不安でしたね。うまくいってもどれくらい回復するかということも気になっていました。

園田先生 TAVIを実施しないとますます悪くなってしまう状況だったのですが、起こり得るリスクと成功する可能性を比較して、舟越さんもご家族も悩んでおられたと思います。

松本千年さん 私はもう先生にお任せでした。胸を切らないというのでとても安心しました。それまで大きな病気をしたこともなかったから、胸を切られるのは怖かったんです。

松本さんの息子さん 何かお守りを持っていましたよ。先生から事前に、TAVIの順序、麻酔の方法や種類、リスクについて丁寧に説明していただきましたので、当日は落ち着いていました。

 

退院まではどのように過ごされていたのですか?

松本千年さん 2週間ほどリハビリをしました。かなり歩きましたね。それで、2014年の4月25日に退院しました。

松本さんの息子さん 確か、手術の2日後くらいには、ベッドから下りて、立っていました。その次の日から歩き始めていました。

舟越鐵也さん 私はTAVI前の入院が約1カ月ありましたからね。TAVI を受けた後も1カ月半くらい入院していました。

園田先生 舟越さんにTAVI前に長く入院していただいたのは、心機能がかなり低下していたので、TAVIに耐えられる状態まで内科的に治療するためでした(p.14参照)。TAVIを実施した後も、一時期、心不全が続いていた時期があって、ハートチームで治療を続けていき、ちょうどいい薬の調整ができたところから心臓の状況がよくなってきたんです。術後の2週間ほどは大分つらかったと思いますが、そこから一気に体調がよくなってきましたね。ご自宅に帰って以前と同じような生活ができるようになることを目標に、リハビリをしていただきました。退院されたのは、2015年の9月3日でしたね。


*1 開胸し、大動脈を切開して機能が低下した大動脈弁を取り除き、人工弁を縫い付ける方法。人工心肺装置を用いて、心臓を停止させた状態で行う外科手術。AVR(Aortic Valve Replacement)。

*2 狭心症などの虚血性心疾患に対して行う心臓カテーテル治療。狭くなったり、閉塞してしまったりした血管にカテーテルを挿入し、バルーンやステントを用いて血管を拡張した状態を保つ。PCI(PercutaneousCoronary Intervention)。

*3 TAVIは、カテーテル治療専門医(主に循環器内科医)、心臓血管外科医、麻酔科医、心エコー医および看護師、理学療法士、放射線技師、臨床工学技士などのコメディカルが各専門分野のノウハウを結集し、一人ひとりの患者さんにとって最適な治療法を検討、選択することによってはじめて可能となる。この専門家集団を「ハートチーム」と呼ぶ。

*4 TAVIの2つの手法のうち、肋骨の間を小さく切開し、生体弁を装着したカテーテルを心臓の先端を通じて挿入する方法。TA(Transapical、経心尖アプローチ)。p.15参照。

*5 TAVI の2つの手法のうち、生体弁を装着したカテーテルを太ももの付け根の血管から挿入する方法。TF( Transfemoral、経大腿アプローチ)。p.15参照。

 

ここに掲載された情報は、あくまで一般的な解釈に基づき疾病・治療法情報を提供する目的で作成されたものであり、 特定の手技等を推進するものではありません。個々の患者さんの診断および治療方法については、必ず医師とご相談ください。

登場者プロフィール

  • 患者さん

    舟越 鐵也さん
    (88歳)

  • 息子さん

    舟越 邦明さん

     

  • 患者さん

    松本 千年さん
    (88歳)

  • 息子さん

    松本 聖一さん

  • 監修

    園田 拓道先生

    九州大学病院
    ハートセンター
    心臓血管外科
  • 監修

    大井 啓司先生

    九州大学病院 
    ハートセンター
    循環器内科
  • 監修

    有田 武史先生

    九州大学病院 
    ハートセンター
    第一内科
  • 監修

    横山 拓先生

    九州大学病院 
    ハートセンター
    第一内科

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